「海洋深層水使用」の塩、裏を見ると「逆浸透膜」と書いてありませんか?
これは精製塩ほど悪くはありませんが、昔ながらの塩とも違う、現代特有の「工業的な塩」です。マイクロプラスチックを除去できる反面、海本来の有機物やエネルギーまで濾過され、味が尖ってしまうデメリットがあります。
本記事では、RO塩の正体と栄養面での盲点を解説し、おにぎりや漬物にはなぜ「天日塩」を使うべきか、その決定的な理由をお伝えします。
逆浸透膜塩はイオン交換膜塩とは違うが、「天然」とも言い切れない中途半端さ
「不純物ゼロ」で有機物や微細な海の恵みまで濾過されてしまう無機質さ
スーパーで「室戸の海洋深層水を使用」などと書かれた塩のパッケージを見て、裏面に「工程:逆浸透膜」とあるのを目にしたことがあるでしょう。これは、イオン交換膜で作る純度99%の化学塩(食卓塩)ほど悪くはありません。少なくとも、ミネラルを全て遮断するわけではないからです。
しかし、逆浸透膜というのは、真水を取り出すために開発された、極めて目の細かいフィルターです。ここに海水を無理やり通して濃縮する過程で、マイクロプラスチックなどの有害物質を取り除けるというメリットはありますが、同時に海が持っている「生きた有機物」や、分析しきれないほどの「極微量ミネラル」までをも、汚れと一緒に濾過(ろか)してしまうのです。
海の水は、単なるミネラルウォーターではありません。プランクトンや海藻の恵みなど、生命の源が溶け込んでいます。逆浸透膜を通った塩は、いわば「きれいに消毒されすぎた塩」であり、海本来の複雑な味わいや生命力が削ぎ落とされた、どこか無機質なものになってしまう。これが、昔ながらの塩作りを知る者が感じる、一番の違和感なのです。
急速濃縮の弊害:太陽と風の時間をかけない「効率化」が招く、結晶のエネルギー不足
もう一つの大きな問題は、その「時間」と「エネルギー」のかけ方にあります。本来の塩作りとは、塩田で太陽の熱を浴び、風に吹かれ、ゆっくりと時間をかけて水分を蒸発させていくものです。この気の遠くなるような時間の中で、塩は太陽のエネルギーを蓄え、結晶としての「格」を高めていきます。
ところが、逆浸透膜による濃縮は、高い圧力をかけて一瞬で水分を分離させる、非常に効率的な工業プロセスです。そこには、自然の移ろいや待つ時間は存在しません。人間が都合よく管理した工場の中で、電気と圧力で作られた塩には、残念ながら自然界の力強いエネルギー、いわゆる「気」が不足しています。
形は塩であっても、それを食べた時に体の底から力が湧いてくるような感覚が薄いのは、こうした製造工程の不自然さが影響していると考えられます。効率を求めれば求めるほど、私たちは「命を養う力」を失ったものを口にすることになるのです。
栄養面でのデメリット:ミネラルバランスの崩れと味への影響
成分表には載らない「ニガリ」の質の変化:機械的濃縮と自然分離の違い
「ミネラルは残っているから大丈夫」とメーカーは言いますが、問題はその「バランス」と「質」です。天日干しや平釜で煮詰める伝統的な製法では、水分が飛んでいく過程で、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムといった成分が、自然の法則に従って順番に結晶化したり、ニガリとして残ったりします。この自然な分離(分蜜)によって、人間にちょうど良いバランスの塩が出来上がるのです。
しかし、逆浸透膜で無理やり濃縮された海水は、その成分バランスが機械的に固定されてしまいます。その後の煮詰め工程で調整はされますが、やはり自然の摂理に従ってゆっくりと抱き込まれたミネラルとは、体への馴染み方が異なります。数値上は同じマグネシウム量であっても、それが体内でどう働くか、細胞にどう吸収されるかという「質」の部分で、RO塩は天然の塩には及ばないのです。
舌を刺す塩辛さ:ナトリウムの主張が強く、素材を包み込む「まろやかさ」に欠ける理由
その違いは、正直な舌であればすぐに分かります。逆浸透膜で作られた塩を舐めてみてください。多くのものが、舌をピリリと刺すような、角のある塩辛さを感じるはずです。
これは、ナトリウムとそれ以外のミネラル(ニガリ分)の結合が弱く、口に入れた瞬間にナトリウムだけが強く主張してしまうためです。また、海の水に含まれる有機物などの「雑味(旨味)」が取り除かれているため、ふくよかさに欠けるのです。
本物の塩というのは、辛い中にも甘みがあり、奥深さがあります。おにぎりにした時、米の甘みを引き出すのは本物の塩ですが、ただ塩辛くしてしまうのがRO塩の特徴です。毎日使う調味料だからこそ、この味の差は、家族の味覚を育てる上でも、精神的な満足感を得る上でも、決して小さくないデメリットとなるのです。
使い分けの基準→下処理には合格でも、おにぎりや漬物にはやはり「天日塩」
では、逆浸透膜の塩は捨てなければならないのかというと、そうではありません。精製塩(食卓塩)よりははるかに良く、マイクロプラスチックの心配が少ないという点では、現代的なメリットもあります。要は「適材適所」です。
パスタを茹でる大量のお湯や、野菜のアク抜き、魚のぬめり取りなど、最終的に洗い流したり茹でこぼしたりする用途には、このRO塩で十分です。価格も手頃で、惜しみなく使えます。
しかし、梅干しを漬ける、おにぎりを握る、吸い物の味を決める、といった「塩そのものの力が試される場面」では、どうしても役不足です。ここ一番という時には、やはり太陽と風の力だけで結晶になった「完全天日塩」や、平釜でじっくり炊き上げられた塩を使ってください。
安くてきれいなRO塩と、手間暇かかった本物の塩。それぞれの生い立ちとデメリットを理解した上で、賢く使い分けること。それが、便利さと健康の両方を大切にする、現代の食養生の知恵なのです。
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