お湯に溶かすだけで、それらしい味が決まる「出汁入り味噌」。
忙しい台所の救世主のように思えますが、少し立ち止まって考えてみてください。
なぜ、本来腐りやすい「出汁」と「味噌」を混ぜて、常温で置いておけるのでしょうか。
そこには、自然の理に反したカラクリがあります。
便利さと引き換えに失った「酵母の命」と、舌を狂わせる添加物の正体を知り、今日から「命を養う味噌汁」を取り戻すことです。
便利さの裏に潜む「不自然な味」。添加物が舌と体を麻痺させる
「アミノ酸等」という名の魔法の粉が、素材本来の味を消してしまう
スーパーの棚に並ぶ出汁入り味噌の裏側、「原材料名」を見たことがありますか。
そこには大豆や米、塩といった本来の材料の後に、「調味料(アミノ酸等)」という文字が並んでいます。
これは、化学的に合成されたグルタミン酸ナトリウムなどのことです。
この強烈な旨味は、脳に直接「美味しい」という信号を送ります。
しかし、それは素材から時間をかけて引き出された滋味とは似て非なるものです。
この強烈な味に慣れてしまうと、野菜が本来持っている繊細な甘みや、本物の昆布出汁の淡い旨味を感じ取れない「味覚障害」に近い状態を招きます。
子供の舌は正直です。化学的な味に慣れさせてはいけません。
本物の味を知ることは、生きる力を育むことなのです。
ミネラルなき旨味。たん白加水分解物が脳に与える偽りの満足感
もう一つ、よく使われるのが「たん白加水分解物」です。
これは法的には食品に分類されますが、大豆や小麦などのタンパク質を塩酸で分解して作る、限りなく添加物に近いコク出し成分です。
これの問題点は、自然界には存在しない濃縮された旨味でありながら、そこには体に必要な微量ミネラルが欠落していることです。
体は「旨味が入ってきたから栄養も来るはずだ」と期待しますが、実際には空っぽのカロリーと塩分しか入ってこない。
すると脳は混乱し、もっと食べたくなり、過食や肥満の原因ともなります。
自然の恵みをいただく食事において、不自然な操作をされたものは、必ず体にひずみを生むのです。
その味噌は生きているか。「だし入り」にするために犠牲になった酵母の命
腐敗を防ぐための「酒精(アルコール)」添加と加熱殺菌の真実
本来、味噌は生きています。麹菌や酵母菌が呼吸をし、発酵を続けているのです。
しかし、そこに「鰹節エキス」や「昆布エキス」といった有機物(出汁の成分)を混ぜて常温で流通させようとすれば、当然ながら爆発的な発酵が進むか、腐敗してしまいます。
発酵を強制的に止める二つの方法
- 「加熱殺菌」をして菌を死滅させる
- 「酒精(アルコール)」を添加して菌の活動を抑え込む
つまり、皆様が手軽だと思って買っているその味噌は、もう呼吸をしていない「死んだ味噌」である可能性が高いのです。
味噌汁が長寿の薬と言われるのは、生きた酵素や菌が腸内環境を整えてくれるからこそ。
出汁入りの便利さは、その最大の効能と引き換えに成り立っていることを知ることです。
腸内環境を整えるはずの味噌が、単なる「味のついた調味料」に変わる時
生きた味噌を使えば、具材の消化を助け、毒素を排出する力が働きます。
しかし、加熱殺菌された出汁入り味噌は、単なる「味噌味のスープの素」に過ぎません。
昔の人は言いました。「味噌は医者いらず」と。それは、生きた微生物と共生していたからです。
チューブから絞り出すだけのペーストに、命を養う力は残っていません。
少し色が変わりやすかったり、袋が膨らんだりするのは、味噌が生きている証拠です。
扱いやすさばかりを求めて、私たちは大切な「共生者」を排除してしまったのです。
料理の腕が上がらない本当の理由。素材の声を消してしまう「均一化」された味
魚の煮付けにその味噌を使えますか?「かつお風味」が邪魔をする弊害
出汁入り味噌の最大の料理上の欠点は、味が決まりすぎていることです。
「かつお出汁入り」の味噌を使って、アサリの味噌汁を作れば、アサリの繊細な風味とかつおの香りが喧嘩をします。
サバの味噌煮に使えば、魚の臭みを消すどころか、妙な調味料の味が鼻につくでしょう。
料理というのは、その日の食材に合わせて、出汁を変えたり、濃さを調整したりするものです。
最初から味がつけられた味噌を使うということは、その調整の余地を自ら放棄することです。
これではいつまで経っても、食材の持ち味を生かす料理の腕は上がりません。
味噌はキャンバスであり、絵の具ではありません。
真っ白なキャンバスであってこそ、旬の野菜という絵が描けるのです。
季節や体調に合わせて「味を加減する」という台所の主導権を取り戻す
夏は汗をかくから少し塩気を効かせて、冬は根菜の甘みを引き出すために味噌を控えめにする。
本来、家庭料理とはそうやって家族の体調に合わせて加減をするものです。
しかし、出汁入り味噌はメーカーが決めた「黄金比」で固定されています。
これに従うことは、台所の主導権を企業に明け渡しているのと同じです。
自分の舌で味見をし、「今日は少し薄いかな、昆布を足そうか」と工夫すること。
その小さな試行錯誤の中にこそ、家族を思う愛情が宿るのです。
保存料代わりの「濃い味付け」が招く高血圧のリスク
化学調味料のトゲを隠すために、大量の砂糖と塩が使われている
アミノ酸等の化学調味料は、単体では舌を刺すようなピリピリとした味がします。
これを隠し、まろやかに感じさせるために何が使われているか。
それは大量の「砂糖」や「ブドウ糖果糖液糖」などの甘味料です。
出汁入り味噌の成分表示を見ると、意外なほど糖分が含まれていることに驚くでしょう。
| 項目 | 本物の味噌 | 安価な出汁入り味噌 |
|---|---|---|
| 塩の役割 | 熟成を助けミネラルを補う | 防腐剤としての役割が強い |
| 甘み | 麹による分解の甘み | 砂糖・ブドウ糖果糖液糖 |
| 微生物 | 生きている(酵素あり) | 死んでいる(加熱・酒精) |
さらに、保存性を高めるために塩分も高めに設定されていることが多いのです。
「減塩」と書かれていても、その分、旨味調味料や酸味料で味を補っていることもあります。
手作り味噌の塩分は防腐剤ではありませんが、加工食品の塩分は保存料の側面が強いのです。
減塩タイプでも安心できない?人工甘味料という別のリスクについて
カロリーや塩分を気にするあまり、「減塩・低糖質」の出汁入り味噌を選ぶ方もいますが、そこには「人工甘味料(スクラロースやアセスルファムKなど)」が使われていることがあります。
これらは自然界に存在しない化学構造をしており、肝臓に負担をかけたり、腸内細菌叢を乱したりするリスクが指摘されています。
数字上の塩分が減っても、化学物質が増えてしまっては本末転倒です。
本物の塩と大豆と麹だけで作られた味噌ならば、多少塩分があっても、ミネラルバランスが整っており、カリウムを含む具材と一緒に摂れば血圧を上げる心配は少ないのです。
削り節と本物の味噌があれば、3分で命のスープは作れる
出汁はとらなくて良い。お椀に直接「削り節」を入れるだけの茶節(ちゃぶし)の知恵
「でも、いちいち出汁をとる時間がない」という声が聞こえてきます。
難しく考える必要はありません。鍋で煮出すことだけが出汁ではないのです。
鹿児島には「茶節」という素晴らしい知恵があります。
お椀に味噌と削り節を入れ、そこにお湯を注いでかき混ぜるだけ。
これだけで、最高に香り高い、生きた味噌汁の完成です。
具材は乾燥わかめや、とろろ昆布、あるいは前の晩の茹で野菜で十分。
煮ださないからこそ、鰹節の香りが飛びません。これならインスタントと同じ手間で、本物の栄養が摂れます。
煮干しを粉にして常備すること。丸ごといただくカルシウムの恩恵
もう一つの知恵は「煮干し粉」です。
煮干し(いりこ)をフライパンで軽く炒って水分を飛ばし、ミルサーやすり鉢で粉末にして瓶に入れておくこと。
味噌汁を作る時、具材と一緒にこの粉を小さじ1杯入れるのです。
出汁をとるだけでなく、骨も頭も内臓も、命を丸ごといただくことができます。
便利な商品に頼らなくても、知恵を使えば、私たちはもっと健康に、もっと豊かに暮らせるのです。
今日から、その不自然な味噌を卒業し、本物の味への第一歩を踏み出してみることです。
台所の主役である味噌を「生きている本物」に変えること。それだけで家族の体調は驚くほど変わります。
1. 天然醸造・長期熟成の生味噌
酒精不使用、加熱殺菌なし。酵母が生きている本物の味噌です。お椀の中で命が蘇ります。
2. 本かつお節・煮干し(削り粉)
茶節や煮干し粉作りに。酸化していない、香りの高い素材を選びなさい。添加物の一切ない純粋な旨味が味わえます。
3. 陶器・琺瑯(ホーロー)の味噌瓶
プラスチック容器を卒業し、味噌が呼吸できる環境を。匂い移りもなく、一生使える台所の相棒です。
読者さんからのQ&A
Q. 「減塩」の出汁入り味噌なら、体に良いのではありませんか?
A. 「塩」を減らした分、何を足しているかを見抜くことです。
高血圧を気にして「減塩」を選ぶ気持ちはわかりますが、それは大きな間違いです。本物の味噌に含まれる自然塩(ミネラルを含んだ塩)は、むしろ余分なナトリウムを排出し、代謝を高める働きがあります。
しかし、出汁入り味噌の「減塩」は、腐りやすくなった分、保存料やpH調整剤を強くしたり、化学調味料を足したりしているのが実情です。腎臓にとって一番の負担である「化学物質」の濃度が高まっているのです。本物の味噌を、具沢山の野菜と一緒にしっかり摂ること。それが本当の養生です。
Q. 原材料にある「脱脂加工大豆」とは何ですか?
A. 油を絞り取った後の「残りカス」です。命の全体性がありません。
安価な味噌に使われるこれは、ヘキサンなどの化学溶剤を使って大豆から油を無理やり抽出した後の、いわば「抜け殻」です。自然療法では「一物全体」といって、丸ごとの命をいただくことを大切にします。丸大豆(丸ごとの大豆)を使っているかどうか。ここを見るだけでも、その味噌が工業製品か、食品かが分かります。
Q. 離乳食に、使いやすい出汁入り味噌を使っても良いでしょうか?
A. 一生を左右する味覚の土台を、偽物で作ってはいけません。
乳幼児の舌は非常に敏感です。この時期に人工的な強い旨味を覚えさせてしまうと、野菜本来の甘みを「まずい」と感じるようになります。最近の子供たちの不調は、脳を刺激する化学的な味と無関係ではありません。子供にこそ、少しの手間をかけて煮干しや昆布の本物の味を教えてあげること。それが親が子に残せる、一番の財産です。
Q. プラスチックのカップに入った味噌と、袋入りの味噌、どちらが良いですか?
A. どちらも「呼吸」を止めていますが、強いて言えば袋ではありません。
四角い容器は流通のために呼吸を遮断しています。また、出汁入り味噌に含まれる油脂やアルコールが、容器のプラスチック成分を溶かし出す懸念もあります。
一番良いのは味噌屋さんでの量り売りや手作りですが、市販品を買うなら家に帰ったらすぐに陶器や琺瑯(ホーロー)の容器に移し替えること。プラスチックの中に閉じ込められたままでは、味噌も苦しくて良い働きができません。
Q. 自分で出汁をとるのはハードルが高いです。無添加の「だしパック」なら良いですか?
A. 酵母エキスが入っていないか、よく裏を見て選ぶこと。
「化学調味料無添加」と書かれていても、裏を見ると「酵母エキス」や「タンパク加水分解物」が入っているものが多くあります。これらは不自然な旨味成分です。
本当の無添加とは、原材料が「かつおぶし、昆布、いわし」などの素材そのものだけで書かれているものです。だしパックを使うなら、中身を破って袋ごと味噌汁に入れ、粉ごと全部いただきなさい。命を丸ごといただく工夫をすることです。
【今日からやってみる】生きた味噌汁を取り戻す養生ステップ
- 冷蔵庫の「出汁入り味噌」を卒業し、天然醸造の「生味噌」を買う
- 原材料名を確認し、「アミノ酸等」「酒精」がないものを選ぶ
- 忙しい時は、お椀に直接削り節を入れる「茶節」を試してみる
- 味噌を買ってきたら、プラスチック容器から「ホーロー容器」に移し替える
- 子供にこそ、煮干し粉などを使った「本物の旨味」を味わわせる
便利な商品に頼らなくても、知恵を使えば、私たちはもっと健康に暮らせるのです。
あなたの暮らしが、自然の香りと命の力で満たされることを願っています。
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