自然療法を通して多くの家庭を見てきましたが、病気がちな人や、心のバランスを崩している人の寝室には、ある共通点があります。それは「電気」があふれているということです。
寝室は、単に体を横たえる場所ではありません。昼間働いて傷ついた細胞を修復し、明日への命を養うための、いわば聖域です。その聖域を脅かす目に見えない「電気の毒」と、そこから身を守る本来の暮らし方について、お伝えします。
寝室は命を養う聖域。電気を持ち込んでいないか
枕元のコンセントとスマートフォンが脳の休息を妨げる
眠る時、枕元にスマートフォンを置いて、目覚まし代わりにしていませんか。あるいは、頭のすぐ近くにコンセントの差込口がありませんか。これは、頭という体の司令塔を、一晩中嵐の中にさらしているようなものです。
私たちの脳は、微弱な電気信号で全身に指令を送っています。しかし、スマートフォンの通信電波や、コンセントから漏れ出る電場・磁場は、脳の信号よりもはるかに強いエネルギーを持っています。これらが「ノイズ」となって脳を刺激し続けるため、体は眠っていても、脳は興奮状態から抜け出せないのです。
朝起きた時に頭が重かったり、疲れが取れていなかったりするのは、脳が本当の意味で休まっていない証拠です。せめて寝る時だけは、スマートフォンを別の部屋に置くか、機内モードにすること。そして、ベッドの位置を工夫して、頭をコンセントから少なくとも1メートルは離すことです。
睡眠中に修復されるはずの細胞が、電磁波で傷つけられる恐ろしさ
夜、私たちが眠っている間、体内では素晴らしい修復作業が行われています。「メラトニン」というホルモンが脳の松果体から分泌され、活性酸素を除去し、傷ついた細胞やDNAを修復してくれているのです。このメラトニンは、抗がん作用や老化防止の鍵となる物質ですが、非常に繊細で、強い光や電磁波を浴びると分泌が止まってしまいます。
最新の研究でも、夜間の人工的な電磁波暴露がメラトニンの生成を抑制することが指摘されています。つまり、枕元の電磁波は、単に眠りを浅くするだけでなく、体が本来持っている「治る力」や「免疫力」の働きを邪魔してしまうのです。暗闇と静寂こそが、最高の薬です。電気製品のランプの小さな光さえも消し、コンセントを抜いて、自然の闇に身を委ねることです。
電気毛布は体液を干上がらせる「乾燥機」と同じ
人工的な熱が自律神経を狂わせ、冷え性をさらに悪化させる
寒い冬、電気毛布の温かさは魅力的に感じるかもしれません。しかし、あれは人間を乾燥機にかけているのと同じことです。電気による人工的な熱は、表面だけを急激に温めます。すると、体は「もう熱を作る必要がない」と勘違いをして、自ら熱を生み出す機能をサボり始めます。これが、自律神経の働きを鈍らせ、結果として、電気毛布がないと眠れないほどの重度の「冷え性」を作ってしまうのです。
さらに恐ろしいのは「脱水」です。電気の乾いた熱は、寝ている間に皮膚や粘膜から水分を奪い去ります。朝起きると喉がカラカラだったり、肌が痒くなったりするのは、体液が干上がっている悲鳴です。血液がドロドロになれば、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。温かそうに見えて、実は命を削る道具であることを知らなければなりません。
こんにゃく湿布と湯たんぽ、湿熱が体の芯まで温める
では、どうやって暖を取れば良いのでしょうか。ここでも自然の知恵が役立ちます。
おすすめは「湯たんぽ」、そして何より「こんにゃく湿布」です。電気の熱が「乾熱」であるのに対し、お湯やこんにゃくの熱は「湿熱」です。水分を含んだ熱は、体の奥深くまでじんわりと浸透し、内臓(特に肝臓や腎臓)を芯から温めてくれます。
寝る30分ほど前に、布団の中に湯たんぽを入れておくこと。あるいは、茹でて熱くしたこんにゃくをタオルで巻き、肝臓(右脇腹)や丹田(おへその下)に当てて30分ほど休むこと。こうして内臓が温まれば、自分の力で血液が巡り出し、手足の先までポカポカしてきます。
機械に頼るのではなく、自分の体が持つ「燃える力」を引き出してあげるのが、本当の手当てです。
土に触れて電気を逃がす「アース」のような生き方
木綿の寝具と素足の生活が、体に溜まった静電気を逃がす
現代人は、ゴム底の靴を履き、アスファルトの上を歩き、化学繊維の服を着ています。これでは、体の中に発生した静電気が逃げ場を失い、どんどん溜まっていきます。これを「帯電」と言いますが、体に電気が溜まると、血流が悪くなり、ホコリや花粉などのアレルギー物質を引き寄せやすくなります。
寝室こそ、この電気をアース(放出)する場所にしなければなりません。まず、寝具を見直すことです。ポリエステルなどの化学繊維は静電気の温床です。シーツ、枕カバー、パジャマは、吸湿性と通電性のある「木綿(コットン)」や「麻(リネン)」に変えること。
天然素材は、寝ている間に体から出る静電気を空気中の水分とともに逃がしてくれます。そして、家の中ではなるべく素足で過ごし、床(できれば無垢材や畳)に触れる時間を作ることです。
朝日のエネルギーを浴びて、狂った体内時計をリセットすること
夜に溜まった澱(おり)を流す仕上げは、朝の太陽です。朝起きたら、まずカーテンを開け、窓を開け放ち、朝日のエネルギーを全身で浴びること。
私たちの体には体内時計がありますが、夜遅くまでの照明やスマホの光で、現代人の時計は狂いがちです。朝の太陽光、特にブルーライトを含む自然の光に網膜が刺激されると、脳の時計がリセットされ、約15時間後に再び眠くなるようにスイッチが入ります。
また、太陽の光は「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促します。電気という偽物の光ではなく、天から降り注ぐ本物の光と共に生きるリズムを取り戻すこと。それが、健やかな命を育む一番の近道です。
【読者さんからのQ&A】
Q. ベッドのスプリング(金属)がアンテナになって電磁波を集めるというのは本当ですか?
A.金属製のスプリングマットレスは、室内のWi-Fiや電気配線から出る電磁波を拾い、増幅させるアンテナの役割をしてしまうことがあります。特に日本の住宅は狭く、配線との距離が近いため影響を受けやすいのです。
寝ている間、背中側から常に微弱な電流を流され続けているような状態になりかねません。
体がだるい、背中が痛むという方は、金属を使っていない「天然素材の布団」や「ラテックス(天然ゴム)のマットレス」、「高反発ウレタン(金属不使用)」などに変えてみることを強くおすすめします。自然素材の上で眠る安心感は、何物にも代えがたいものです。
Q. 鉄筋コンクリートのマンションの2階以上に住んでいて、土にアースできません。どうすれば良いですか?
A. 現代の住宅事情では、地面に直接触れるのが難しいことも多いでしょう。コンクリートは土と違って電気を通しにくく、呼吸もしませんから、どうしても室内に電気が淀みやすくなります。
そんな時は、室内に「観葉植物」や「炭」を置くことです。植物は根から水を吸い上げ、葉から蒸散する過程で、空気のバランスを整えてくれます。また、備長炭などの炭は、多孔質で電気的な偏りを調整する力(調整作用)を持っています。
枕元や部屋の四隅に炭を置くだけでも、空気が澄んでいくのが分かるはずです。そして、休日は公園などへ行き、意識して土の上を歩く、木に触れる時間を持つこと。それだけで体は喜び、バランスを取り戻そうとします。
Q. 寝る時の頭の向き(北枕)は、磁場や電磁波と関係がありますか?
A. 昔から「北枕は縁起が悪い」などと言われますが、実は地球の磁場に沿った、理にかなった寝方なのです。地球は巨大な磁石であり、磁力線は北から南へと流れています。
頭を北に向けることで、血流が磁力線の流れとスムーズに同調し、心臓への負担が減り、脳の血行も良くなると言われています。自然療法でも、頭を冷やし足を温める「頭寒足熱」の理(ことわり)から、北(寒い方角)に頭を向けるのは良いこととされています。
逆に、電磁波の影響を気にするなら、壁の裏側に太い配線が通っている場所や、隣人の家電製品(冷蔵庫やテレビなど)が壁越しにある場所を避けることの方が、方角よりも重要です。見えない壁の向こう側にも気を配る想像力を持つことです。
湯たんぽはプラスチック製と金属製がありますが先生はどっちが良いと思いますか?
結論から申し上げますと、迷うことなく「金属製(トタン)」をおすすめいたします。
最近は手軽なプラスチック製も多く出回っていますが、私たちが体を温め、命を養う道具として選ぶのであれば、昔ながらのトタンの湯たんぽに勝るものはありません。
なぜ、金属製が良いのか。その理由と、プラスチックとの決定的な違いについては下記記事でお話ししておりますのでご覧ください。
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