台所のごま油。あの香ばしい香りに食欲をそそられ、「サラダ油よりは体に良い」と信じて、毎日たっぷりと使ってはいませんか。
ごま油は、古来より「薬」として扱われてきましたが、現代の工業的な製法で作られたものは、薬どころか「毒」になりかねません。
その香ばしさの裏に隠された、抽出溶剤の闇と、脂肪酸バランスの崩壊について、自然の理に基づいた眼を持ってお伝えします。
「植物性なら安心」という迷信を捨てること
リノール酸(オメガ6)の過剰摂取。アレルギーや炎症が治らない真犯人は「油のバランス」にある
「動物性脂肪は悪く、植物性脂肪は良い」という単純な神話を信じてはいけません。
ごま油の主成分は「リノール酸」と呼ばれるオメガ6系の脂肪酸です。
これは確かに人間が生きていく上で必要な必須脂肪酸ですが、現代の食生活では、このオメガ6が溢れかえっています。
| 脂肪酸の種類 | 理想の比率 | 現代人の現状 |
|---|---|---|
| オメガ6(ごま油等) | 2 〜 4 | 10 〜 20 |
| オメガ3(魚油等) | 1 | 1(不足状態) |
理想的なオメガ6とオメガ3(魚油や亜麻仁油など)の摂取比率は「2対1」から「4対1」と言われていますが、現代人は「10対1」あるいは「20対1」とも言われるほど、オメガ6を過剰に摂りすぎています。
リノール酸は摂りすぎると、体内で「アラキドン酸」という物質に変わり、これが痛みや痒み、炎症を引き起こす火種となります。
アトピーや花粉症、原因不明の湿疹が治らないのは、あなたが良かれと思って使っているそのごま油が、体の中で火に油を注いでいるからかもしれません。
油は食品ではなく「薬」と心得るべきです。
ごま油は「食品」ではなく「薬」と心得る
最近では「健康のためにごま油を毎日スプーン一杯飲む」などという健康法があるようですが、これは肝臓をいじめる愚行です。
油はあくまで油。
どんなに良い油であっても、直接飲めば肝臓は全力で分解にかからねばならず、解毒という本来の仕事を後回しにすることになります。
ガブガブと飲んで健康になろうとする、その浅はかな考えを捨てることです。
安いごま油は「石油」で洗われている
ごまを溶かして絞り取る工業的製法。残留溶剤ゼロでも、そのエネルギーは死んでいる
スーパーの特売で売られている、驚くほど安いごま油。
なぜあのような価格で作れるのか、考えたことはありますか。
それは、ごまを物理的に押し潰して絞っているのではなく、「ヘキサン」という石油系の化学溶剤を使って、ごまをドロドロに溶かし、油を余すことなく抽出しているからです。
その後、高温で加熱してヘキサンを揮発させるため、製品には残留していないとメーカーは言います。
しかし、一度石油で洗われ、高熱に晒された油に、種としての生命力が残っているでしょうか。
それは「ごまの死骸」です。
不自然な化学処理を経た食品は、食べた人の血液を汚し、精神までも不安定にさせます。
選ぶべきは「玉締め圧搾」か「低温圧搾」。手間と時間をかけた油だけが生命力を宿す
本当に体を養うごま油が欲しいなら、ラベルの裏を見て、「圧搾法(あっさくほう)」、できれば「玉締め(たまじめ)圧搾」や「低温圧搾(コールドプレス)」と書かれたものを選ぶこと。
これらは、化学薬品を使わず、圧力だけでじっくりと時間をかけて絞り出したものです。
手間がかかる分、値段は数倍しますが、そこにはごまの命がそのまま生きています。
安い油を大量に使うより、高い本物の油をちびちびと大切に使うこと。
それが真の経済観念であり、健康への近道です。
茶色と透明、どちらを選ぶべきか
茶色い「焙煎ごま油」は酸化に強い。セサモリンが熱を守るが、焦げた油は体を焦がす
ごま油には茶色いものと透明なものがあります。
茶色い色は、ごまを炒って(焙煎して)から絞っているからです。
焙煎することで「セサモール」という強力な抗酸化成分が生まれ、酸化しにくい強い油になります。
しかし、色が濃すぎるものは、いわば「焦げた油」です。
過度な焙煎は、微量ながら有害物質を生むこともあります。
香り付けには良いですが、日常的に多用すれば、体の中に焦げ(酸化)を溜め込むことになります。
透明な「太白ごま油」はアーユルヴェーダの秘薬。マッサージと加熱料理に最適な理由
一方、ごまを生のまま絞ったのが、無色透明の「太白(たいはく)ごま油」です。
香りはありませんが、ごま本来の栄養素や酵素が生きています。
インドの伝統医学アーユルヴェーダで、毒出しのマッサージに使われるのはこの油です。
料理に使えば素材の味を邪魔せず、酸化にも強いため、揚げ物やお菓子作りにも向いています。
家庭に常備するなら、香りの強い茶色い油よりも、命に近いこの太白ごま油を選ぶことです。
容器を見れば毒がわかる。プラスチックボトルに入った油を買ってはいけない
油は「溶かす」性質を持つ。ペットボトルから溶け出す環境ホルモンが家族を汚染する
油が入っている容器にも、母の眼を光らせることです。
プラスチックのボトルに入った油を買ってはいけません。
油には「親油性」といって、プラスチックに含まれる化学物質(可塑剤やBPAなどの環境ホルモン)を溶かし出す性質があります。
便利で軽いからといってプラスチック容器を選ぶことは、油と一緒に溶け出した化学物質を家族に食べさせているのと同じです。
遮光瓶に入ったものを選ぶこと。光と空気による劣化を防ぐ、作り手の誠意を買う
油は光と空気で劣化します。
本物の油を作っているメーカーは、必ず「遮光瓶(色のついたガラス瓶)」に入れています。
あるいは、酸化を防ぐために紙で包んでいることもあります。
重くて割れやすい瓶を使うのは、中身の命を守ろうとする作り手の誠意です。
その重みごと愛して、丁寧に扱うことです。
揚げ油にごま油を使う贅沢とリスク。酸化に強い「ごまリグナン」の限界を知る
天ぷら屋の真似をしてはいけない。家庭で使い回したごま油は過酸化脂質の塊である
「ごま油で揚げると美味しい」と、天ぷら屋の真似をしてはいけません。
プロは毎日新しい油を足していますが、家庭では一度使った油を何度も使い回すでしょう。
ごま油は酸化に強いと言われますが、それでも加熱を繰り返せば、毒性の強い「過酸化脂質」に変わります。
台所の壁がベタベタするように、あなたの血管の内側もベタベタになるのです。
揚げ物は、たまのハレの日の楽しみに留めること。
差し油(さしあぶら)の知恵。風味付けとして最後に数滴垂らすのが、最も薬効が高い使い方
最も良いごま油の使い方は、加熱調理の最初に使うのではなく、火を止める直前、あるいは盛り付けた後に「差し油」として数滴垂らすことです。
これなら、油が酸化する間もなく、香りという揮発成分(アロマ)も生きたまま体に取り入れることができます。
熱を加えず、生のままいただく。それが油の命を無駄にしない、昔ながらの知恵です。
私が選ぶ「本物」のごま油
マルホン 太白胡麻油(瓶入り)
薬品を一切使わず、圧力だけで絞った「生」のごま油。酸化に強く、料理はもちろんマッサージやうがいにも使える万能の命です。
九鬼 ヤマシチ純正胡麻油(瓶入り)
昔ながらの「圧搾法」で丁寧に絞られた、深いコクと香りが特徴。プラスチック成分の心配がない瓶入りを選びなさい。
【読者さんからのQ&A】
本文では触れきれなかった、具体的な使い分けや健康法について、自然療法の視点からお答えします。
サラダ油もごま油も、主成分は同じ「リノール酸(オメガ6)」です。リノール酸は必須脂肪酸ですが、現代の食生活では圧倒的に摂りすぎています。
これが体内で過剰になると、アレルギーや炎症を促進させる「アラキドン酸」という物質に変わります。
サラダ油をごま油に変えたところで、リノール酸の摂取量が減るわけではありません。
大切なのは、油の種類を変えること以上に、炒め物や揚げ物を減らし、「蒸す」「煮る」という調理法に戻ること。油を断つ日を作ることが、一番の健康法です。
一般的な茶色いごま油は、ごまを焙煎(ロースト)してから絞るため、あの香ばしい香りと色が生まれます。
一方、太白ごま油は、焙煎せずに生のまま圧搾します。だから無色透明で、香りもほとんどありません。
しかし、ごま本来の抗酸化成分「ゴマリグナン」はしっかり残っており、熱にも強いため、お菓子作りや揚げ物、そして肌へのマッサージ(オイルプリングなど)にも使える万能選手です。
香りで誤魔化さない分、ごまの質の良し悪しが正直に出る油でもあります。
「オイルプリング」と呼ばれる健康法です。太白ごま油(一度100度まで加熱して冷ましたもの=キュアリング)を口に含んでクチュクチュと動かすことで、舌や口腔内の毒素を油に溶かし出し、排出する効果があります。
また、歯茎を引き締め、口臭予防にもなります。しかし、終わった後の油には毒素が含まれていますから、絶対に飲み込まず、紙に吐き出して捨てること。
そして、これに使う油こそ、薬品を使っていない「圧搾法」の本物でなければ意味がありません。口の粘膜からの吸収率は高いのです。
加熱せずにそのままでうがいするのはダメですか?
ダメではありませんが、せっかくの「毒出し」の効果を半減させてしまう、もったいない行為です。
「面倒だからそのまま使いたい」は理解できますが、なぜ、わざわざ火を入れて冷ますのが重要なのか?
それは油の「粘り」を取り、細胞の奥まで浸透させるためです。
生のままのごま油は、分子が大きく、ドロリとしていて重たいものです。これを口に含んでも、表面を撫でるだけで、歯茎の隙間や舌の苔(舌苔)の奥深くにある毒素までは届きにくいのです。
一度100度まで加熱すると、油の分子構造が変化し、驚くほどサラサラとした軽い油に変わります。
サラサラになった油は、粘膜の微細な穴まで浸透し、そこに潜んでいる細菌や毒素(アーマ)を絡め取る力が格段に高まります。
また、ごま油に含まれる成分「セサモリン」は、加熱すると、より強力な抗酸化作用を持つ「セサモール」という成分に変化します。
キュアリングによって薬効を高めた油を使うことで、歯肉炎の炎症を抑えたり、口内環境を整えたりする力が強くなるのです。
安いごま油は、海外産の安価なごまを、ヘキサンという化学溶剤を使って溶かし出し、高温で精製して作られます。
一方、高いごま油は、伝統的な圧搾機でじっくりと物理的に絞り、和紙などで時間をかけて濾過しています。
成分表示にはどちらも「食用ごま油」としか書かれませんが、そこに含まれる生命エネルギーは天と地ほど違います。
安い油を買うということは、化学薬品を使った工業製品を支持するということです。
毎日使う調味料こそ、少し高くても本物を選ぶことが、将来の医療費を節約することにつながります。
かどや製油は、公式に「圧搾法(あっさくほう)」を用いて製造していると明言しています。
つまり、石油系の薬品で溶かし出すのではなく、物理的に圧力をかけて絞り出すという、昔ながらの方法を守っています。
スーパーで手軽に買えて手頃な価格帯でありながら、この製法を貫いている点は、企業としての良心かと思います。
しかし、安心して使い続けても良いのか?見極めるべきことが2点あります。
①「搾り方」は良くても、「種」は海外から来ている
日本国内のごま自給率は0.1%未満。長い船旅を経て運ばれてくるごまには、品質保持のためのポストハーベスト(収穫後農薬)の懸念が完全には拭えません。
②「高温」での処理であること
「純正ごま油」は、強い香りを出すために高温で深く焙煎しています。高温処理は酸化を進みやすくします。
かどやのごま油は、「最悪の毒(ヘキサン抽出)」は避けて作られた、比較的良心的な「食品」です。病気治しやデトックスのための「薬」として使うなら、やはり「国産ごま」を使った「低温圧搾」のものを選ぶのが最良です。
日々の炒め物には「かどや」を使い、ここぞという時の生食には「高級品」を使う。そのように使い分けるのが、賢い台所の守り方です。
「危険ですか?」と問われれば、答えは「薬品による危険はありません」となります。
大手メーカーの中でも、マルホンは創業(享保10年!)以来、圧力だけで搾る圧搾製法を貫いています。
【それでも残る「2つの注意点」】
①「ペットボトル」ではなく「瓶」を選ぶこと
油には「親油性」があり、プラスチックの成分を溶かし出す性質があります。中身が良いものであればあるほど、その器にも気を配り、ガラス瓶に入ったものを買うのが、家族の体を守る鉄則です。
② 原料はやはり「輸入」であること
かどやと同様、原料のごまは主に海外産です。これを完全に避けるには、高価な国産ごま油を探すしかありません。それでも、マルホンは残留農薬検査などを厳格に行っており、日常使いとしては十分合格点です。
【今日から実践】ごま油との賢い付き合い方・まとめ
- 「植物性=ヘルシー」の迷信を捨て、油全体の量を減らす。
- 薬品抽出ではない「圧搾法」「低温圧搾」の油を選ぶ。
- プラスチック容器を避け、「ガラス瓶」入りの油を買う。
- 加熱の最初ではなく、仕上げに「差し油」として使う。
- 太白ごま油で「うがい(オイルプリング)」をして毒素を出す。
油一つで、あなたの血液の質が変わり、精神の安定まで変わります。
安い油を大量に使う生活を卒業し、本物の一滴を慈しむ暮らしを始めてください。
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