便利な機械に囲まれて暮らすうちに、私たちは本来持っていた「手」の力を忘れてしまっているようです。
ドライヤーのスイッチを入れれば、熱風があっという間に髪を乾かしてくれますが、それは同時に、髪が本来持っている「潤い」という名の命を奪うことでもあります。
機械の力で無理やり水分を飛ばすのではなく、布と手のひらを使って、髪の声を聴きながら水気を拭うこと。
それが、艶やかで健康な髪を育てる第一歩です。
ここでは、自然の理(ことわり)にかなった吸水と乾燥の作法をお話ししましょう。
機械に頼らない「吸水」こそが美髪の原点
ゴシゴシと擦るのは髪への暴力、優しく「挟む」手当ての心

お風呂上がりの濡れた髪というのは、生まれたての赤子の肌のように無防備です。
科学的に言えば、髪の内部の結合(水素結合)が水によって切断され、表面のキューティクルが開いて、非常に傷つきやすい状態になっています。
この時に、早く乾かそうとしてタオルでゴシゴシと擦り合わせるのは、髪に対する暴力です。
濡れた紙を擦ればボロボロになるのと同じで、髪の表面が剥がれ落ちてしまいます。
【正しいタオルドライの作法】
- タオルで髪を優しく包み込む
- 手のひらでギュッギュッと挟むようにする
- 水分をタオルへと移していく
これを「タオルドライ」と呼びますが、私は「手当て」と呼びたいのです。
手の温かさを伝えながら、髪の一本一本から余分な水気を吸い取ってあげる気持ちで行うこと。
この丁寧な吸水さえできていれば、後の乾燥にかかる時間は驚くほど短くなります。
化学繊維のタオルは静電気の元?木綿と麻が吸い取る自然の力

最近は「吸水速乾」を謳ったマイクロファイバーのタオルが流行っていますが、あれは石油から作られた化学繊維(プラスチック)です。
確かに水は吸いますが、乾燥した瞬間に静電気を発生させやすい性質を持っています。
静電気は髪のキューティクルを逆立て、枝毛や切れ毛の原因となります。
| 素材 | 特徴と髪への影響 |
|---|---|
| 木綿・麻(自然素材) | 繊維が呼吸し、静電気を逃がして調和をとる。 |
| 化学繊維(マイクロ等) | 吸水は早いが、静電気でキューティクルを傷めやすい。 |
やはり、人の肌に触めるものは、土から生まれた自然素材が良いのです。
木綿(コットン)や麻(リネン)は、繊維そのものが呼吸をしています。
特に使い古してクタクタになった木綿のタオルや、吸水性に優れた麻のタオルは、髪に優しく馴染み、静電気を起こさずに水分だけを素直に吸い取ってくれます。
自然の素材は、私たちの体から出る電気を適度に逃がし、調和をとってくれるのです。
「自然乾燥」で頭を冷やしてはいけない
濡れた頭皮が招く「万病の元(冷え)」と血流の滞り
「ドライヤーを使わないと風邪を引く」と昔から言われますが、これは真実です。
水分が蒸発する時、周囲の熱を奪う「気化熱」という現象が起きます。
濡れた頭のまま放置することは、頭皮を冷蔵庫で冷やすようなものです。

頭には多くの血管が集まっており、ここが冷えると全身の血流が滞(とどこお)ります。
自然療法では、頭の冷えは腎臓の弱りや婦人科系の不調にも繋がると考えます。
自然乾燥といっても、ただ濡れたまま放っておくのではありません。
「寒くないように工夫する」ことが絶対の条件です。
タオルドライで徹底的に水気を取ったら、すぐに乾いたタオルを肩にかけたり、頭に巻いたりして、冷気を遮断すること。
頭皮が冷たくなる前に乾かす手立てを打つことが、命を守ることに繋がります。
冬場はどうする?部屋の暖気と蒸しタオルを活用する昔の知恵

冬場の自然乾燥は特に注意が必要です。まず、部屋を暖かくしておくこと。
室温が低ければ、いつまで経っても乾かず、体温だけが奪われていきます。
ここで昔の知恵を借りましょう。
タオルドライの合間に、熱いお湯で絞った蒸しタオル(あるいは乾いたタオルを温めたもの)を首の後ろに当てるのです。
首には太い血管が通っていますから、ここを温めると温かい血液が頭皮に巡り、内側から乾燥を助けてくれます。
また、こまめに乾いたタオルに取り替えるのもコツです。
湿ったタオルをいつまでも頭に乗せていることが、一番の冷えの原因です。
「冷たい」と感じる前に、温かい布で包んであげること。これが冬の養生(ようじょう)です。
生乾きによる雑菌と臭いを防ぐために
髪の根元に空気を通す「指の櫛(くし)」の使い方

自然乾燥で一番心配されるのが、「生乾きの臭い」でしょう。
これは、洗濯物の生乾き臭と同じで、湿気を好む雑菌(モラクセラ菌など)が繁殖するからです。
菌は湿気と温度を好みます。
髪の表面は乾いていても、密集している根元が湿っていると、そこは雑菌の温床となります。
これを防ぐには、風通しを良くすることです。
【根元の蒸れを防ぐ知恵】
- 指を櫛(くし)のように使い、髪を持ち上げて空気を通す
- 時々、分け目を変えてあげる
- 扇風機の弱風を遠くから当てて空気を循環させる
髪の根元が呼吸できるように、道を作ってあげるのです。
最後は椿油で蓋をする、天然のコーティング術
髪が八分通り乾いたら、仕上げに油を補います。
昔から日本の女性が愛用してきた「椿油(つばきあぶら)」は、人の皮脂成分(オレイン酸)を多く含み、酸化しにくい素晴らしい油です。
ほんの一滴、手のひらによく伸ばし、毛先を中心に薄く馴染ませること。

これが天然のコーティングとなり、髪の内部に残った必要な水分を閉じ込め、外部の摩擦や乾燥から守ってくれます。
高価なトリートメントなど必要ありません。
自然界にあるものが、私たちの体を一番良く知っているのです。
タオルの素材は何が一番良いか
最後に、どのタオルを使うべきかについてお伝えします。
結論から言えば、「麻(リネン)」または「使い込んだ木綿」です。
| 素材 | 美髪へのメリット |
|---|---|
| 麻(リネン) | 綿の4倍の吸水力。すぐ乾くため雑菌がわかず清潔。 |
| 使い込んだ木綿 | 余計な薬品が落ち、髪に優しく馴染んで水分を吸う。 |
麻は、綿の4倍とも言われる吸水力を持ちながら、乾くのが非常に早い素材です。
タオル自体が早く乾くということは、タオルの中で雑菌が繁殖しにくいということ。
木綿ならば、オーガニックコットンや、昔ながらの製法で作られたガーゼタオルが良いでしょう。
新品のフワフワしたタオルは、実は水を弾いてしまうことがあります。
何度も洗って、余計なものが落ちた「育ったタオル」こそが、美髪を作る最高の名医なのです。
読者さんからのQ&A
Q. 自然乾燥だと、どうしても髪がうねったり、広がったりしてまとまりません。
A. それは髪からの「乾燥していますよ」という悲鳴です。
うねりや広がりを、ドライヤーの熱とブラシの力で無理やり真っ直ぐに矯正していませんか。
それは、泣いている子供の口を塞ぐようなものです。髪が広がるのは、スカスカになった髪が空気中の湿気を吸おうとしているからです。
椿油などの植物油を補い、頭皮をマッサージして血行を良くし、食事を見直すこと。
髪は血液の余りです。内臓が整えば、自然乾燥でもストンと落ち着く素直な髪に変わります。
Q. オイルはホホバオイルでもいいですか?
A. もちろん、ホホバオイルでも構いません。
自然療法で大切なのは、「何を使うか」以上に、「自分の髪に合っているか」を見極めること。【選び方の目安】
・椿油:髪が太くて硬く、広がりやすい人に最適。
・ホホバオイル:髪が細い人、ボリュームを維持したい人に最適。
自分の髪に少しつけてみて、髪が喜んでツヤを出しているか、その声を手で感じ取ることです。
Q. 美容師さんには「自然乾燥だとキューティクルが開いたままで傷む」と怒られます。
A. 「熱で焼かれた髪」と「自然に閉じた髪」、どちらが生きていると思いますか?
熱風で強制的にキューティクルを閉じるのは、タンパク質が熱変性を起こして固まっている状態です。
一度熱で硬くなった髪は、二度と水を吸わない「死んだ物質」になります。
自然乾燥は、ゆっくり水分が抜ける過程で、せっり(摂理)に従って閉じていきます。
手触りで判断することです。
Q. 髪が長くて乾くのに時間がかかりすぎます。冬場は風邪を引きそうで怖いです。
A. 生活に無理があるなら、髪を切る勇気を持つのも養生です。
その長い髪が原因で体を冷やしては元も子もありません。
タオルを3枚も4枚も使って乾かないのであれば、肩まで切ること。
その浮いた時間でゆっくりお風呂に浸かる方が、よほど美しさと健康のためになります。
身の丈に合った暮らしをすること。それが自然と共に生きるということです。
【今日から実践】美髪を育てる髪の乾かし方・まとめ
- タオルは擦らず、優しく挟んで水気を吸い取らせる。
- 綿や麻などの自然素材のタオルを選ぶ。
- 頭を冷やさないよう、冬場は首の後ろを温める。
- 髪の根元に「指の櫛」で空気を通し、蒸れを防ぐ。
- 8割乾いたら、一滴の椿油で命の水を閉じ込める。
便利な機械を手放し、自らの「手」で髪をいたわる時間は、自分自身を慈しむ時間でもあります。
あなたの髪が、本来の輝きを取り戻すことを願っています。
最後に本記事の内容を実践するにあたり、必要な道具をまとめてご紹介いたします。
【管理人厳選】自然の力で髪を育てる本物の道具
大島椿(純椿油)
一滴で髪の「蓋」となり、潤いを閉じ込めます。酸化しにくく、頭皮のマッサージにも使える万能の油です












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